俳句の作り方 涼しの俳句
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ 小林一茶こばやしいっさ
涼しが夏の季語。
もともと「涼し」は秋の冷気を表しました。
しかし蒸し暑い日本の夏。
木陰、うちわの微風、風鈴の音など涼しさをよぶものがほしいところです。
そんな涼しさを求める人々の気持ちが夏の季語として定着しました。
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
独身の気楽さから誰に遠慮することもなく
大の字に寝て涼しさを満喫する一茶。
この涼しさには安堵の気持ちと満足感がこめられています。
しかし、それを分かち合う人はいません。
一茶はたまらない孤独と寂寥感に襲われています。
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
この句が生まれたいきさつを生い立ちからご説明します。
小林一茶は1763年生まれ1828年没。
一茶は俳号です。
今の長野県で中農の子として生まれました。
幼いころに母と死別し、父が再婚した継母との仲が悪かったのでした。
一茶を可愛がっていた祖母の死後には極度に関係悪化。
これを憂いたのは父でした。
心苦しく思いながらも一茶15歳のとき江戸に奉公に出します。
江戸で一茶は俳諧と出会い、俳諧行脚に出ます。
古典を学び俳諧師としての実力を身につけていきます。
そうこうするうち父が亡くなりました。
父の遺言状には一茶と異母弟の財産の二分割が書かれていました。
これを不満に思った継母と異母弟とのあいだで相続争いが発生します。
仲介する人が現れて13年間争っていた遺産問題がようやく解決します。
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
この句は一茶が郷里に定住した後の作品です。
長い俳諧行脚を経て、ようやく故郷に家を構えた一茶。
この時すでに51歳でした。
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
小林一茶の句はたくさんありますが、「大の字に寝て涼しさよ淋しさよ」は私も大好きな句です。 「やせ蛙まけるな一茶これにあり」も好きです。
大の字の句は、あくまで私の私見ですが、人間の根源的な孤独感を表していると思います。